無在庫転売は違法なのか:法律とプラットフォーム規約は別の話
「無在庫転売」で検索すると、上位に並ぶのは法律事務所のページや不正検知サービスの記事です。刑事事件を扱う事務所の解説が出てくることもあります。これを見て「違法なのか」と不安になるのは自然な反応です。
ただし、この検索結果は少し誤解を招きます。混ざっているのは、2つの別々の問題だからです。
1つは法律の問題。もう1つはプラットフォーム規約の問題。この2つは重なる部分もありますが、同じものではありません。そして実務でセラーが直面するのは、圧倒的に後者です。
この記事は法的助言ではありません。個別の事案について判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
そもそも無在庫転売とは何か
在庫を持たずに出品し、注文が入ってから仕入れて発送する販売形態を指します。英語で言うdropshippingにあたる考え方です。
日本語の「無在庫転売」という言葉には、英語の"dropshipping"にはない響きがあります。「転売」という語自体が、日本では否定的な文脈で使われることが多いからです。チケットの高額転売や品薄商品の買い占めが社会問題として報じられてきた経緯があり、同じ語が使われることで販売形態そのものが同一視されやすくなっています。
この語感の問題は無視できません。検索結果の顔ぶれも、この語感を反映しています。
「違法」という記事が扱っているのは何か
上位に並ぶ法律系の記事を実際に読むと、扱われているのは主に次のような行為です。
- 代金を受け取ったのに商品を届けない
- 手に入る見込みのない商品を販売する
- 取引の実態について事実と異なる説明をする
- 特定の商品について、別の法律による規制がある(チケットの不正転売、医薬品、酒類など、扱う物によって許認可や規制が関わるもの)
これらはいずれも「無在庫であること」が問題なのではありません。 届けられないものを売る、事実と違うことを言う、規制のある物を許可なく扱う。そうした行為が問題であって、在庫を先に持っているかどうかとは別の軸です。
在庫を持っていても届けなければ同じ問題になりますし、無在庫でも確実に仕入れて期日どおりに届けていれば、この論点には当たりません。
実際に事業を止めるのは規約違反のほう
法律の話よりも、日々の実務で効いてくるのはプラットフォームの規約です。
無在庫での出品が認められるかどうかは、出品先ごとに違います。 一律の答えはありません。
| 出品先 | 確認すべきこと |
|---|---|
| メルカリ | 手元にない商品の出品を禁止しています |
| eBay | 卸売業者・メーカーからの直送は認める一方、他の小売業者やマーケットプレイスから購入して直送させる形は認めていません |
| Amazon | 記録上の販売者が自分であることなど、満たすべき条件が定められています |
| その他 | サービスごとに規定が異なります。出品前に必ず本文を確認してください |
表は要点だけです。規約は改定されますし、細部の条件は本文にしか書かれていません。 出品先を決めたら、その規約を自分で読んでください。この記事を根拠に判断しないでください。
規約違反の結果は単純です。出品の削除、出品制限、そしてアカウント停止。法律に一切触れていなくても、売る場所を失えば事業としては止まります。「違法ではない」ことは「続けられる」ことを意味しません。
リスクが集中するのは「仕入れられなかったとき」
無在庫という形態に固有のリスクを1つだけ挙げるなら、これです。
注文が入ってから仕入れる以上、仕入れ先の在庫切れ、値上がり、発送遅延が、そのまま自分の取引の不履行になります。 在庫を持っていれば起きない種類の失敗で、しかも自分ではコントロールできません。
ここが、先ほどの「法律の問題」と接続する場所でもあります。届けられない取引が積み重なれば、規約上の問題であると同時に、取引上の責任の問題になります。仕入れ先を分散させる、在庫の変動が激しい商品を避ける、といった備えは、倫理の話ではなく実務上の必要です。
判断の順番
無在庫でやるかどうかを決めるなら、次の順番で確認するのが確実です。
- 出品先を決める。 そのうえで、そのサービスの規約本文を読む
- 扱う商品に固有の規制がないか確認する。 物によっては許認可が必要です
- 仕入れ先が安定しているか確認する。 在庫切れの頻度がそのままリスクになります
- 売れているかどうかを確かめる。 実際に売れた価格と頻度を見ます
- 手数料と送料を引いて手取りを計算する
1と2を飛ばして3以降から始めると、うまくいった頃にアカウントが止まります。
在庫を持つ選択肢と比べる
無在庫の利点は、仕入れ資金が先に出ていかないことです。これは資金が限られている段階では実質的な利点です。
欠点は、いま見たとおり取引の成否が自分の外側にあることです。在庫を持てば資金は寝ますが、届けられるかどうかは自分で決められます。
どちらが正しいという話ではありません。ただし出品先が禁止している形態を選ぶことだけは、利点と欠点の比較以前の問題です。そこは比較ではなく確認です。
まとめ
「無在庫転売は違法か」という問いへの実務的な答えは、問いが2つに分かれているというものです。
販売形態そのものを一律に禁じる法律があるわけではありません。一方で、無在庫での出品を禁止しているプラットフォームは実際にあり、そちらに違反すればアカウントを失います。日々効いてくるのは後者です。
やるべきことは1つだけです。出品先の規約を、自分で、最新の本文で読む。 この記事を含め、まとめ記事を根拠に判断しないでください。
よくある質問
無在庫転売は法律で禁止されていますか。
「無在庫で売ること」そのものを一律に禁じる法律があるわけではありません。ただし届けられない商品を販売する、取引の実態を偽るといった行為は、取引上の責任や法的な問題につながり得ます。個別の判断は専門家に相談してください。
ではなぜ「違法」という記事が多いのですか。
検索結果に法律事務所や不正検知サービスの記事が多く並ぶためです。それらが扱っているのは主に、代金を受け取って商品を届けない事例やチケットの高額転売など、別の法律が関わる行為です。無在庫という販売形態そのものとは分けて読む必要があります。
メルカリで無在庫販売はできますか。
できません。メルカリは手元にない商品の出品を禁止しています。詳細はメルカリのガイドで確認してください。
eBayではどうですか。
eBayのdropshippingに関する方針では、卸売業者やメーカーから購入者へ直接発送する形は認められる一方、他の小売業者やマーケットプレイスから購入して直送させる形は認められていません。必ずeBayの規定本文を確認してください。
規約違反になるとどうなりますか。
出品の削除、出品制限、アカウントの停止などの措置が取られる可能性があります。法律に触れていなくても、販売する場所を失えば事業としては止まります。