ドロップシッピングの失敗:儲からない理由と、日本で払う代償
「ドロップシッピングで失敗した」と語られる状態は、4つの型に分かれます。そして型ごとに、失うものの大きさと、それが来る時期が違います。 広告費だけで終わる型と、返金とアカウントまで行く型を、同じ対策で扱うことはできません。
「ドロップシッピング 失敗」「ドロップシッピング 儲からない」で検索して並ぶのは、個人のブログ、掲示板の書き込み、そしてサービス会社の解説記事です。挙げられる理由はどれも似ています。利益が薄い、競合が多い、発送が遅い、差別化できない。間違ってはいません。ただし、どれも代償を書いていません。
もう1つ、日本語の記事がほとんど触れない事実があります。日本では、この売り方をしている店そのものが珍しいです。 売れていなかったのは運が悪かったからではなく、自分の市場で最も例の少ない形を選んでいた、という可能性のほうが先に来ます。この記事は、その2つを順番に扱います。形態そのものの説明はドロップシッピングとは何かの記事にあります。
「失敗」の中身は4つの型で、代償の重さが違う
まず、自分がどの型にいるのかを決めてください。対策を読む前にここを決めないと、効かないほうの対策を実行することになります。
| 型 | 何が起きるか | 代償 | いつ来るか |
|---|---|---|---|
| 1. 需要を確かめずに商品を選ぶ | 出品しても広告を出しても売れない | 広告費と、かけた時間。金銭の損失はここで止まります | 最初の数週間 |
| 2. 仕入れ先が1社しかない | 在庫切れや値上がりで注文を履行できない | 返金、評価の低下、出品先のアカウント制限。売上が立った後に来ます | 売れ始めてから |
| 3. 出品前に利益を計算しない | 売れているのに手元に残らない | 回転すればするほど増える赤字。気づくのが遅れます | 月末に数えたとき |
| 4. 出品先の規約を読まずに始める | 認められていない形で出品していた | 出品停止。うまくいった頃に来ます | 軌道に乗った後 |
型1は、いちばん軽い失敗です。 失うのは広告費と時間で、商品を替えればやり直せます。それに対して型2と型4は、売上が立った後に来ます。つまり「うまくいっている」と思っている時期に進行していて、止まるときには買い手との取引が絡んでいます。
だから、確かめる順番は時間の順ではなく、代償の順です。規約と仕入れ先を先に固め、需要の確認は後から何度でもやり直す、というのが実際の進め方になります。
日本では、この売り方をしている店がほとんどない
ここが、日本語で書く意味のある部分です。
ZIK Analyticsが運用するZIK Marketplace Index(ZMI)のShopifyデータで、国が日本として登録されているストアを2026年9月21日時点で集計しました。912店のうち、直近30日に商品が売れていたのは653店です。そのうち、
| 店のタイプ | 店数 | 売れている店に占める割合 |
|---|---|---|
| 無在庫型と判定された店 | 2店 | 0.3% |
| 単品販売の店 | 9店 | 1.4% |
| オンデマンド印刷の店 | 1店 | 0.2% |
店数はドメインの数で数えています。「売れている」は推定値で、取引の記録そのものではありません。
一方で、同じ集計の商品数の中央値は89点です。 つまり日本のShopifyストアの標準的な姿は、89点ほどの商品を並べて、そのうち半分弱が月内に売れる、カタログ型の小売です。無在庫で数点を回す形は、この集計の中では例外的な少数です。集計の全体像は日本のShopifyストアを集計した記事にあります。
この数字の読み方には注意が必要です。2店というのは「日本に無在庫の店が2つしかない」という意味ではありません。この集計に入っている912店の中で、無在庫型と判定されたのが2店だということです。それでも、自分が選んだ形が、自分の市場でほとんど例を見ない形だと知っておくことには意味があります。 「みんなやっている」という前提で始めた場合、その前提は日本では成り立っていません。
売れる場所が4つしかなく、そのうち2つは閉じているか条件付き
日本から在庫を持たずに売る場合、場所の選択肢はこれだけです。
| 出品先 | 在庫を持たない出品 | この売り方で先に効いてくる制約 |
|---|---|---|
| メルカリ | 禁止。手元にない商品の出品を認めていません | 選択肢になりません |
| Amazon.co.jp | 条件付き。自社のポリシーの条件を満たす場合に限ります | ポリシーの本文。記録上の販売者が誰になるか |
| 自分のShopifyストア(国内の買い手) | 店は自分のものなので、規約という意味での制約は最も少ない | 特定商取引法の表示義務と、返品に関する表示 |
| 海外の買い手(eBayなどへの輸出) | eBayは卸売業者・メーカーからの直送を認め、他の小売業者からの直送は認めていません | 特定商取引法の適用除外。代わりに重さと手数料 |
米国の記事が前提にしている「とりあえずマーケットプレイスに出す」という段階が、日本にはありません。 日本最大級のC2Cマーケットプレイスは明確に禁止しており、Amazon.co.jpは条件付きです。詳細はそれぞれメルカリの無在庫販売の記事とAmazonの無在庫販売の記事にあります。法律と規約の切り分けは無在庫転売は違法なのかの記事で扱っています。
残る2つは、自分の店か輸出です。そしてこの2つは、効いてくるルールがまったく違います。 次の2つの節が、その違いです。
自分の店で国内に売るなら、特定商取引法が先に来る
自分のShopifyストアで日本の買い手に売る形は、特定商取引法の「通信販売」に当たります。インターネットで広告し、通信手段で申込みを受ける取引です。
そして、「副業として試しているだけ」という自己認識は、適用の有無を変えません。 消費者庁の特定商取引法ガイドは、営利の意思の有無は本人の意思にかかわらず客観的に判断され、要件に該当すれば個人でも同法上の「販売業者」になると明記しています。この一文の原文と、法第11条が定める広告への表示事項の一覧(販売価格と送料、支払時期と方法、引渡時期、事業者の氏名・住所・電話番号など)は、Amazonの出品方法の記事に表で整理してあります。この記事では繰り返しません。
この記事が扱うのは、その一覧の中で在庫を持たない売り方に特に重く効く1項目です。
返品に関する表示だけは、省略が認められていない
表示事項には、消費者からの請求に応じて書面や電子メールで提供する措置を講じている場合に省略できるものがあります。消費者庁のガイドはその一覧を表で示していて、氏名・住所・電話番号は「省略できる」側に入っています。
そして同じ表で、どの場合でも「省略できない」とされている項目の1つが、返品に関する事項(返品の可否、返品の期間等条件、返品の送料負担の有無)です。
表示していない場合に何が起きるかも、同ガイドが民事ルールとして書いています。通信販売では、消費者は商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。 事業者が広告であらかじめ特約を表示していた場合は、その特約によります。
ここが、この売り方の構造上の弱点と法律が正面からぶつかる場所です。返品された商品は、どこに戻るのでしょうか。 在庫を持たない事業者には、戻す先の倉庫がありません。サプライヤーが返品を受け入れる契約になっていなければ、商品は自分の手元に来て、自分の負担になります。つまり、日本の法律が省略を認めていない唯一の表示項目が、在庫を持たない形がいちばん吸収しにくい項目です。
これは法的助言ではありません。自分の店で国内に売ると決めたなら、消費者庁のガイドと条文を自分で読み、返品の条件を自分で決めて表示してください。
輸出なら法律の適用外になり、代わりに重さと手数料が来る
海外の買い手に売る場合は、話が変わります。特定商取引法の適用除外(法第26条)には「海外にいる人に対する販売又は役務の提供」が挙げられています。買い手が海外にいるなら、上の節の表示義務と8日間の返品は、この法律からは来ません。
代わりに来るのが2つあります。
1つは手数料の計算対象です。eBayの手数料は売値ではなく、買い手が払った合計にかかります。買い手に請求した送料にも同じ料率がかかるため、送料を別建てにしても手数料からは逃げられません。もう1つは重さです。日本郵便の料金は重さの区分で上がる固定費なので、同じ価格で売っても、梱包後の重さが区分をまたぐと収支が変わります。
この2つの内訳はeBay輸出が儲からない場合の記事とeBayの送料の記事にあります。ここで押さえるべきは、輸出は「規制が緩い逃げ道」ではなく、効いてくるコストの種類が入れ替わるということです。
型1への対策:売れた実績を、出品する前に見る
4つの型のうち、対策が最も単純なのが型1です。やることは1つで、「売れそう」ではなく「実際に売れた」を見ることです。
確かめるのは出品価格ではありません。同じ商品や同じ検索語で、実際に何個売れたか、どれくらいの期間に売れたか、何件の出品が競合しているか。この3つが揃えば、広告費を払う前に判断がつきます。
eBayに輸出で出す形なら、ZIK AnalyticsのeBay Product Research Toolがこの作業の画面です。検索語を入れ、マーケットプレイス、フィードバック、価格、販売日(7日・14日・21日・30日)のフィルターを設定して検索すると、その期間に実際に売れた数と、出品のうち売れた割合が出ます。初心者向けの目安として挙げられているのは、7日で2件以上(14日なら4件以上、30日なら6件以上)売れていて、競合が5件以下の商品です。
この画面の限界も、先に書いておきます。 ZIK Analyticsが追えるのは、直近7日・14日・21日・30日のいずれかで1回以上売れた、出品中またはGTCの出品です。30日より前の履歴は追えず、1点物は売れた後は追えません。 つまりこの画面は「最近売れているか」を答える道具で、「去年の同じ時期に売れたか」には答えません。季節性を知りたい場合は、別の確かめ方が必要です。
このサイトは日本語ですが、アプリの画面は英語で、日本語表示には対応していません。eBayの日本国内向けマーケットプレイスは存在しないため、ここで見られるのは輸出先の市場の数字です。リサーチの手順そのものはeBayリサーチの記事にあります。
型2への対策:仕入れ先を2社目まで確かめる
型2の代償が重いのは、それが買い手との取引が成立した後に来るからです。
注文が入ってから仕入れる以上、仕入れ先の在庫切れ、値上がり、発送遅延は、そのまま自分の取引の不履行になります。在庫を持っていれば起きない種類の失敗で、しかも自分ではコントロールできません。そして不履行は、返金だけで終わりません。評価が下がり、出品先の規約上の問題になり、アカウントの制限に至ります。
対策は地味です。扱う商品について、発送できる仕入れ先を2社確かめる。 在庫の変動が激しい商品を避ける。出品者の名前で発送してもらえるかを、出品する前に確認する。他の小売店で買って転送する形は、多くの出品先で認められていないうえ、在庫も価格も自分では制御できません。中国からの仕入れを前提にする場合の確認事項は中国からの仕入れの記事にあります。
型3への対策:引く項目を全部並べてから出品する
型3は、計算の順番を変えるだけで防げます。売値から引く項目を、出品する前に全部並べてください。仕入れ値、出品先の手数料、決済手数料、送料、そして返品の見込みです。
返品の見込みを入れるのが、この売り方では特に重要になります。前の節のとおり、国内向けなら表示していなければ8日間の返品権があり、商品が自分の手元に戻ってくる可能性があります。その分を見込んでいない利益計算は、実際には利益計算になっていません。
ドロップシッピングは1個ずつ仕入れるため、まとめて仕入れる場合より仕入れ値が高くなります。Amazonの出品者向けページも、この点を利益を出しづらい理由として挙げています。つまりこの形態は、構造的に利益率が低いところから始まります。 残らなければ、商品を替えるのが正しい対応です。出品の仕方を工夫しても結果は変わりません。
失敗しても残るもの:記録と申告
最後に、やめた後の話です。
国税庁のタックスアンサーNo.1900は、給与所得者のうち、給与所得と退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告をしなければならない、としています(同ページの時点表示は令和8年4月1日現在法令等)。基準は売上ではなく所得、つまり経費を引いた後の金額です。 雑所得と事業所得の分かれ目や住民税の扱いまで含む全体像は、物販の副業の記事で扱っています。
失敗した側にとって重要なのは、そこから出てくる1つの帰結です。基準が所得である以上、経費を証明できなければ基準を下回っていることも言えません。 仕入れの明細、送料の領収書、広告費の明細、返金の記録。うまくいかなかった取引ほど、記録は散らばりがちです。だから、やめるかどうかを決める前の段階から記録を残しておくことが、この売り方では実務的な意味を持ちます。
この記事は税務助言ではありません。自分が対象になるかは、国税庁の本文か税務署で確認してください。
まとめ
「ドロップシッピングで失敗した」は4つの型に分かれます。需要を確かめなかった(代償は広告費)、仕入れ先が1社だった(代償は返金とアカウント)、出品前に計算しなかった(代償は回転するほど増える赤字)、規約を読まなかった(代償は出品停止)。重い3つは、売上が立った後に来ます。
日本から始める場合は、その前に場所の問題があります。メルカリは禁止、Amazon.co.jpは条件付き。残るのは自分の店か輸出で、自分の店で国内に売るなら特定商取引法の表示義務と、省略が認められていない返品の表示、そして引渡しから8日間の返品権が効きます。輸出ならその法律の適用外になり、代わりに重さの区分と、支払い総額にかかる手数料が効きます。
そして、直近30日に売れていた日本のShopifyストア653店のうち、無在庫型と判定されたのは2店です。この売り方を選ぶなら、自分の市場では例の少ない形を選んでいると知っておいてください。この記事を根拠に判断せず、出品先の規約と消費者庁・国税庁の本文を自分で読んでください。
よくある質問
ドロップシッピングのデメリットは何ですか。
在庫を持たない代わりに、仕入れ先の在庫切れ、値上がり、発送遅延がそのまま自分の取引の不履行になります。これが構造上の最大の欠点です。加えて1個ずつ仕入れるため仕入れ値が高くなり、利益が薄くなります。日本で自分の店に国内向けに出す場合は、特定商取引法の表示義務と、返品に関する表示を省略できないという制約が加わります。
ドロップシッピングは儲かりますか。
このサイトでは収益額を提示しません。判断材料として言えるのは2つです。1つは、売値から仕入れ値、出品先の手数料、決済手数料、送料、返品の見込みを引いた金額が残るかどうかを、出品する前に計算できるかどうか。もう1つは、日本で実際にこの売り方をしている店が少ないという事実です。直近30日に売れていた日本のShopifyストア653店のうち、無在庫型と判定されたのは2店でした。
ドロップシッピングは禁止されていますか。
この記事は法的助言ではありません。この販売形態そのものを一律に禁止する法律があるわけではなく、実務で事業を止めるのは出品先の規約のほうです。メルカリは手元にない商品の出品を禁止し、Amazon.co.jpは自社のポリシーの条件を満たす場合に限って認めています。法律と規約の切り分けは無在庫転売の記事で扱っています。
ドロップシッピングの成功例はありますか。
このサイトでは特定の個人や店の成功談を紹介しません。確かめられる形で言えるのは、日本のShopifyストアの集計では無在庫型は0.3%、単品販売は1.4%で、中央値89商品のカタログ型の小売が主流だということです。成功談の数より、自分が選んだ出品先でその形が認められているか、手数料と送料を引いて利益が残るかのほうが、先に答えの出る問いです。
個人で輸出しても儲からないのはなぜですか。
売れていない場合と、売れているのに残らない場合があります。後者の原因はたいてい計算対象の取り違えで、eBayの手数料は売値ではなく買い手が払った合計にかかります。加えて日本郵便の料金は重さの区分で上がる固定費なので、同じ価格で売っても梱包後の重さで結果が変わります。輸出の収支の内訳はeBay輸出の記事で扱っています。
失敗して赤字になった場合、確定申告は必要ですか。
この記事は税務助言ではありません。国税庁のタックスアンサーNo.1900は、給与所得者のうち給与所得と退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要としています。基準は売上ではなく所得、つまり経費を引いた後の金額です。だからこそ、経費を証明できる記録が必要になります。雑所得と事業所得の分かれ目や住民税まで含む全体像は物販の副業の記事で扱っています。自分に当てはまるかは国税庁の本文か税務署で確認してください。