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物販の副業は怪しい?古物商許可と確定申告、売る場所の決め方

物販の副業は、それ自体が怪しいものではありません。 国税庁はタックスアンサーに「No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」という専用のコードを置いていて、制度の側はこれを普通の副収入として扱っています。怪しいかどうかを分けているのは、副業の種類ではなく、古物営業法の許可と、ネット販売での表示義務と、確定申告という3つの手続きを踏んでいるかどうかです。

検索して出てくるのは、物販のセミナーを売っている会社の記事、会計ソフトの会社の記事、そして個人のブログやQ&Aです。セミナーを売る側は「やってはいけない副業」を正直には書けませんし、会計ソフトの記事は申告の話で終わります。この記事は、始める前に確認すべきことを、国税庁と警視庁と法令そのものから確認します。

なお、この記事は「月にいくら稼げるか」を答えません。理由は最後に書きます。

物販の副業とは、どこまでを指すのか

物販の副業とは、商品を仕入れて、売って、その差額を得る副業のことです。仕入れる、という点が重要です。

日本語では近い言葉がいくつかあり、意味も印象も違います。

  • 物販:物を売ることを指す中立的な言葉です。ビジネスとして言うときに使われます。
  • せどり:店舗やネットで安く仕入れて別の場所で売る手法を指す、古くからある言い方です。具体的なやり方はAmazonせどりの記事オンライン無在庫販売ではない仕入れ型の解説で扱っています。
  • 転売:同じ行為を指すこともありますが、日本語では品薄品の買い占めを連想させる使われ方が定着しています。
  • 無在庫販売(ドロップシッピング):仕入れずに注文を受けてから発注する形です。日本のマーケットプレイスでは規約上の扱いが厳しく、無在庫転売の可否で別に整理しています。

そして、自分が使っていた物を売ることは、ここで言う物販には入りません。 これは言葉の問題ではなく、税金と許可の両方で扱いが変わります。国税庁No.1906は「生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税」と明記していて、古物営業法第2条第2項第一号は、古物を売却することのみを行う営業を古物営業から除いています。クローゼットの整理と、仕入れて売る副業は、制度上まったく別のものです。

仕入れた時点から、以下の話が始まります。

「怪しい」と言われる理由は、法律がはっきり線を引いているから

物販が怪しく見えるのは、許可なく、名前も出さずに売っている人が実際にいるからです。逆に言えば、法律はその線を明確に引いています。

古物商許可が必要になるのはどんなときか

古物営業法第3条は、古物営業を営もうとする者は都道府県公安委員会の許可を受けなければならない、と定めています。

問題は「古物」の範囲です。同法第2条第1項の定義は次のとおりです。

「古物」とは、一度使用された物品(中略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう

後半を読み飛ばさないでください。「使用されない物品で使用のために取引されたもの」、つまり誰も使っていない新品でも、使うために一度取引されたものは古物です。小売店で買った新品を転売する形は、多くの場合この定義に入ります。「新品だから中古品の法律は関係ない」という理解は、条文と合いません。

やろうとしていること古物商許可根拠
自分が使っていた物を売るだけ不要第2条第2項第一号(売却のみを行う営業は古物営業から除かれる)
中古品を買い取って売る必要第2条第1項・第3条
小売店で買った新品を転売する必要になる場合が多い第2条第1項(使用されない物品で使用のために取引されたもの)
自分で作った物を売る不要古物に当たらない

実際の申請は、警視庁の案内によると次のようになります。申請先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係手数料は19,000円。個人で申請する場合の添付書類は、略歴書、本籍が記載された住民票の写し、誓約書、身分証明書(本籍地の市区町村が交付するもので、運転免許証とは別のものです)、そしてネットで売るならURLの使用権限があることを疎明する資料です。

判断に迷う取引がある場合は、営業所を管轄する警察署の防犯係に確認してください。それが正式な窓口です。

ネットで売るときの表示義務

ここが、多くの人が想像していない部分です。

警視庁は「古物商許可申請をされる方へ」で、インターネットを利用した取引の際の表示義務をこう説明しています。古物商は、許可を受けていることを取引の相手方に明らかにするため、ホームページ上で、「許可を受けた公安委員会名」「許可証番号」「氏名又は名称」を表示しなければならない。そして個人で許可を受けた場合は、氏名に代えて営業所の名称のみを表示することは認められない。オークションサイトやフリマアプリを利用して、古物商であることを表示せずに取引を行うことはできない、とも書かれています。

さらに、同じページはこう続けます。インターネットを利用して古物の販売を行うことは特定商取引法の「通信販売」に該当し、個人の事業者であっても、事業者の氏名、住所、電話番号等を表示する義務が生じます。

つまり、匿名の静かな副業という形は、制度上選べません。 実名と連絡先が公開されます。これは物販の副業を検討するうえで最も大きな前提のひとつですが、検索上位のどの記事も見出しにはしていません。

仕入れのときにも義務があります。古物を買い受ける際、相手方の住所、氏名、職業、年齢を確認しなければならず、これはインターネットオークションやフリマアプリでの取引でも免除されません。警視庁は、非対面の取引では法令で定められた確認方法が必要で、単に運転免許証のコピーの送付を受けるだけでは不十分だと明記しています。

税金:20万円のラインと、雑所得・事業所得の分かれ目

会社員の多くは年末調整で完結していて、確定申告をしたことがありません。副業を始めると、そこが変わります。

国税庁No.1900とNo.1906によれば、年末調整が済んでいる給与所得者でも、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計が20万円を超える場合は、所得税の確定申告が必要です(還付を受ける人を除く)。

数字の読み方を2つ確認してください。

  1. 20万円は売上ではなく所得です。 売上から仕入れ値や送料などの必要経費を引いたあとの金額で判断します。
  2. これは所得税の規定です。 国税庁の各ページは対象税目を所得税としています。住民税は市区町村が扱う別の手続きなので、お住まいの自治体に確認してください。

では、その所得はどの区分になるのか。国税庁No.1906は、オークションサイトやフリマアプリを利用した個人取引による所得は一般的に雑所得に該当するとしています。一方で、No.1350の事業所得は、事業から生ずる所得で、金額は総収入金額から必要経費を引いて計算します。

この区分は、赤字になったときに効いてきます。

雑所得事業所得
所得の計算総収入金額から必要経費を引く(No.1500)総収入金額から必要経費を引く(No.1350)
損益通算の対象か対象外(No.2250 注2)対象(No.2250 (2))
赤字を給与と相殺できるかできないできる

この表の根拠は国税庁No.2250「損益通算」です。損益通算の対象となる所得として事業所得が挙げられている一方、注2は「配当所得、給与所得、一時所得および雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません」と明記しています。

在庫を抱える副業で、この差は小さくありません。 仕入れた商品が売れ残って赤字になったとき、雑所得なら給与と相殺できず、損失はそのまま残ります。事業所得なら相殺できます。どちらに当たるかは、規模や継続性など実態で判断されるもので、自分で選べる項目ではありません。自分のやり方がどちらに当たるかは、税務署か税理士に確認するのが確実です。

なお雑所得の場合、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超えると、現金預金取引等関係書類の保存が必要になります(No.1500)。

在庫を持たない形を検討している場合は、ドロップシッピングの仕組みで在庫リスクと利益率の関係を整理しています。

売る場所をどう決めるか

仕入れる物より先に、売る場所を決めたほうが判断が早くなります。場所によって、買い手を連れてくるのが誰か、必要な手続き、必要な資金が変わるからです。

売る場所買い手を連れてくるのは主に必要になるもの
国内のフリマアプリ・モールプラットフォーム古物商許可(仕入れて売る場合)、販売手数料
eBayへの輸出eBay海外向けの発送体制、英語での出品、為替の理解
自社のShopifyストア自分集客の予算と技術、月額費用

国内のフリマアプリやモールは、買い手がすでにいる場所です。最初に需要を確かめるには合理的で、その代わり販売手数料を払い、プラットフォームの規約に従います。

eBayへの輸出は、日本には国内向けのeBay市場がないため、出品すれば常に海外に売ることになります。買い手を集めるのはeBayの仕事ですが、送料、関税、為替、返品が加わります。始め方はeBay輸出の記事、費用の全体像は越境ECの記事で扱っています。

自社ストアは、買い手を自分で連れてくる形です。これがどれだけの仕事かは、実際に売れている店を見ると分かります。ZIK Marketplace Index(ZMI)が日本のShopifyストア912店を対象に2026年9月21日時点で集計したデータでは、直近30日に売れた653店のうち56.7%がMeta広告を出稿していました。自社ストアの集客は、多くの場合、広告費という形で表に出ます。日本のShopifyストア全体の構成は日本のShopifyストアのデータレポートにまとめています。

副業として始めるなら、買い手がすでにいる場所から試すほうが、答えが出るまでの費用は小さくなります。売れることが分かってから、手数料の安い場所や自社ストアに移すという順番は、あとからでも取れます。

「月10万円」に数字で答えない理由

この検索でよく並ぶ質問が「副業で月10万円稼ぐのは難しいですか」です。この記事は金額を答えません。

理由は単純で、答えられる根拠がないからです。 誰かの実績は誰かの実績であって、これから始める人の見込みではありません。金額を示している記事の多くは、その数字がどこから来たのかを示していません。示せない数字は、判断材料になりません。

代わりに、結果を決めている要素を挙げます。

  1. 1回の取引で残る金額。 売値から仕入れ値、販売手数料、送料、梱包材を引いたあとに残る額です。ここが薄い商品は、何個売っても構造は変わりません。
  2. 在庫が現金に戻る速さ。 同じ利益率でも、30日で売れる商品と180日かかる商品では、同じ資金で回せる回数が違います。
  3. 赤字が出たときに給与と相殺できるか。 上の表のとおり、雑所得ではできません。売れ残りのリスクを、税制がどう扱うかという話です。
  4. 手続きにかかる初期費用と時間。 古物商許可の手数料19,000円と、書類を揃えて警察署に出す時間は、売上が立つ前に発生します。

この4つを自分の数字で埋められる人は、他人の実績値を必要としません。埋められないうちは、どんな金額を見ても判断できません。

始める前に決めておく4つのこと

  1. 仕入れて売るのか、自分の物を手放すだけなのか。 後者なら、この記事の手続きはほぼ関係ありません。前者なら、次の3つに進みます。
  2. 古物商許可が必要な取引かどうか。 中古品を買い取るなら必要です。新品の転売でも、第2条第1項の定義に当たる場合が多くあります。迷ったら管轄の警察署の防犯係に確認してください。
  3. 実名と連絡先が公開されることを受け入れられるか。 ネットで古物を売るなら、公安委員会名、許可証番号、氏名の表示義務があり、特定商取引法では住所と電話番号も必要になります。
  4. 売る場所をどこにするか。 買い手を連れてくるのが自分なのか、プラットフォームなのか。副業として始めるなら、まずは買い手がいる場所です。

勤務先の就業規則で副業が制限されていないかも、先に確認してください。これは法律ではなく、勤務先との取り決めの問題です。

まとめ

物販の副業が「怪しい」と言われるのは、副業の形そのものではなく、手続きを飛ばして売っている人がいるからです。国税庁はネットオークションの副収入に専用のコードを用意し、古物営業法は許可の要否を条文で定め、警視庁は表示すべき項目を列挙しています。線はすでに引かれていて、確認できます。

始める前に決まっているのは、この4つです。古物商許可が要るかどうか、実名と連絡先の公開を受け入れられるかどうか、所得が20万円を超えたら申告が必要だということ、そして赤字が出たときに給与と相殺できるかは所得区分で決まるということ。

そのうえで売る場所を選びます。買い手がすでにいる場所から始めて、売れることを確かめてから広げるほうが、確かめる前に広げるより費用が小さくなります。金額の見込みは、そこで初めて自分の数字として出てきます。

よくある質問

副業で物販をするのは怪しいですか。

物販という副業の形そのものは、制度の側から見れば普通の副収入です。国税庁はタックスアンサーに「No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」というコードを置き、オークションサイトやフリマアプリを利用した個人取引による所得を一般に雑所得として扱うと説明しています。怪しいかどうかを分けているのは、やっている人が法律上の手続きを踏んでいるかどうかです。古物を買い取って売るなら都道府県公安委員会の許可が必要で(古物営業法第3条)、ネットで売るなら許可証番号と氏名の表示義務があります(警視庁)。許可も表示もないまま仕入れて売っている状態が、実際に問題のある形です。

やってはいけない副業はありますか。

この記事は「やってはいけない副業ランキング」のような順位づけはしません。物販について言えば、避けるべきなのは副業の種類ではなく、手続きを飛ばした状態です。具体的には、古物商許可が必要な取引を許可なく行うこと、許可を受けていながら公安委員会名・許可証番号・氏名をサイトに表示しないこと、仕入れ時に相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認しないこと(警視庁は、運転免許証のコピーを送ってもらうだけでは不十分だと明記しています)、そして20万円を超える所得があるのに確定申告をしないことです。勤務先の就業規則で副業が制限されている場合は、それも先に確認してください。

副業の物販で確定申告が必要になるのはいくらからですか。

給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる人の場合、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です(国税庁No.1900、No.1906。いずれも令和8年4月1日現在の法令等による)。注意点が2つあります。1つは、20万円は売上ではなく所得、つまり売上から必要経費を引いたあとの金額だということ。もう1つは、これらが所得税についての規定だということです。住民税は市区町村が扱う別の手続きなので、お住まいの自治体に確認してください。

自分の服や家電をメルカリで売るのにも許可や申告は要りますか。

自分が生活で使っていたものを売るだけなら、話が変わります。税金については、国税庁No.1906が「生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税」で、損失も生じていないものとみなされる、と明記しています。許可については、古物営業法第2条第2項第一号が、古物を売却することのみを行う営業を古物営業から除いています。つまり、仕入れずに自分の持ち物を手放すことは、この記事で扱っている物販の副業とは別のものです。仕入れて売り始めた時点から、許可と申告の話が始まります。

副業で月10万円稼ぐのは難しいですか。

この記事は金額を答えません。いくら稼げるかを断定する記事は、その数字の裏づけを示せないのが普通だからです。代わりに、結果を決める要素を挙げます。仕入れ値と売値の差から販売手数料と送料を引いたあとに残る金額、その在庫が何日で現金に戻るか、そして赤字になったときにその損失を給与と相殺できるかどうかです。最後の点は所得区分で決まります。国税庁No.2250によれば、損益通算の対象となるのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得で、雑所得の損失は他の所得から控除できません。同じ売り方でも、この差で手元に残る金額は変わります。

会社に知られずに物販の副業はできますか。

ネットで古物を売る形では、実名が公開されます。警視庁は、古物商がインターネットを利用して取引する際、許可を受けた公安委員会名、許可証番号、氏名または名称をホームページ上に表示しなければならないとしていて、個人で許可を受けた場合は営業所の名称だけを表示することは認められないと明記しています。さらに、ネットでの古物の販売は特定商取引法の通信販売に該当するため、個人の事業者でも氏名、住所、電話番号等の表示義務が生じます。勤務先に知られるかどうかは別の問題ですが、少なくとも「誰にも分からない形で売る」ことは制度上できません。